Week End / End Game

End Game / Week End

この本について

2017年9月、アーティストの田村友一郎は並行して制作されたふたつのプロジェクトを発表しました。ひとつが栃木県の小山市立車屋美術館での個展「試論:栄光と終末、もしくはその週末/ Week End」(以下「Week End」)、そしてもうひとつが横浜で開催された日産アートアワード2017にて発表した作品「栄光と終焉、もしくはその終演/ End Game」(以下、「End Game」です。

2017年5月に田村が日産アートアワードのファイナリストに選出された際に、新作を同時期にふたつ発表するという具体的な課題に直面し、パラレルなふたつの作品にどのような重なりを持たせるのか田村は模索することとなりました。同時に、小山市立車屋美術館の展覧会においてゲストキュレーターを務め、田村の個展を開催することを決めた私が、日産アートアワードにおいても推薦委員として田村を推薦するなど、この重なりを生む一因が私にも少なからずありました。

展覧会から遡ること1年前の2016年の冬にはじめて小山市立車屋美術館を訪れた田村は、美術館の公用車である黒い日産グロリアに興味を示しました。郊外の地方都市において現代美術の展覧会を開催する意味や可能性を考える際に、田村のこの着眼は非常に興味深いものでした。それから半年を経て、奇しくも日産アートアワードでの発表が決まったことで、何の繋がりもないふたつの異なった都市において、グロリア=栄光に焦点を当てる作品が展開されていくことになりました。

作品「End Game」ではシルバーの日産グロリアが崖から転落するのですが、その場所は「Week End」が展示された小山市からそう遠くない場所であったことで黒とシルバーの2台のグロリアが現場で出会うことになったりと、この本の構造にも影響を与える偶然の出来事がいくつか重なりました。

本書は、並行して走りながらも、ごく稀に交わるふたつのプロジェクトを、並行関係のまま一冊にまとめたものです。コンテンツには、作家のステイトメントやキュレーターによる作家論が登場することはなく、むしろ作家やキュレーターが、プロジェクトの過程における議論のきっかけを与えてくれたり、あるいは作品に関する独自の考察を提示してくれた批評家などに、より深く話を聞くべく行ったインタビューなどが盛り込まれています。そのことで他者からの視点や思考を内包するとともに、主体となる私たちへの再解釈を促すなど、展覧会とは別の広がりを本書は備えることになりました。言わば展覧会ともパラレルな存在になった本書を、ぜひ手にしていただけると幸いです。

(服部浩之)

書誌情報

単行本:172ページ
価格:2,000円(税込) →通信販売をご希望の方
言語:日本語(一部英語)

編集:服部浩之、田村友一郎、中尾英恵
著者:田村友一郎、服部浩之、平倉圭、藤田直哉
デザイン:尾中俊介(Calamari Inc.)
撮影:田村友一郎
翻訳:古木淑子、高安真愉美、西田雅希、三上真理子
印刷:大村印刷株式会社
発行:小山市立車屋美術館、田村友一郎展実行委員会
〒329-0214栃木県小山市乙女3-10-34 Tel.0285-41-0968

©2018小山市立車屋美術館、田村友一郎展実行委員会

本書は、田村友一郎による展示「試論: 栄光と終末、もしくはその週末/ Week End」(小山市立車屋美術館)と作品「栄光と終焉、もしくはその終演/ End Game」(日産 アートアワード2017、BankART Studio NYK)のカタログとして制作された。

“Week End/ End Game” Catalogue

Paperback: 172 pages
Price: 2,000JPY (include tax)
Language: Japanese and English

Edited by: Hiroyuki HATTORI, Yuichiro TAMURA, Hanae NAKAO Author: Yuichiro TAMURA, Hiroyuki HATTORI, Kei HIRAKURA, Naoya FUJITA, Hidenaga OTORI, Tomoyuki TAKAHASHI
Designed by: Shunsuke ONAKA [Calamari Inc.]
Photo: Yuichiro TAMURA
Translated by: Yoshiko KOGI, Mayumi TAKAYASU, Maki NISHIDA, Mariko MIKAMI
Printed in: Omura Printing Co., Ltd.
Published by: Kurumaya Museum of Art, Oyama city, Yuichiro Tamura Exhibition Committee
3-10-34, Otome, Oyama, Tochigi 323-0214, Japan Tel. +81-285-41-0968

©2018 Kurumaya Museum of Art, Oyama city, Yuichiro Tamura Exhibition Committee

This book is published as a catalog of Yuichiro Tamura’s solo exhibition Week End ( Kurumaya Museum of Art, Oyama city) and his work End Game (Nissan Art Award, BankART Studio NYK).